紫煙の先の影に気づいて。

私がタバコを吸う時は、親指と中指で挟んで人差し指を添えるようにしてタバコを持つ。はっきり言おう。これはドラマ『MOZU』の西島秀俊扮する倉木尚武を意識してのことである。(ちなみに気分が荒んだ時には逆手にして親指と人差し指で持ち、映画『パーティ★モンスター』マイケル・アレグ役の際のマコーレー・カルキンがヤクを吸う時のスタイルで吸う)
未だ誰にも指摘されないが、あくまで私はこれを続けていく心づもりである。

かっこいいんです。西島秀俊。私がタバコを始めたのは去年の九月頃なのだけれど、ちょうどその少し前にやっていたドラマが『MOZU』であった。ドはまりしたのである。全体に重苦しいハードボイルドな雰囲気、映画に匹敵する画面の使い方や光とカメラ、印象的で特徴的な登場人物たち。中でも際立っていたのが主演、西島秀俊。手段を選ばず妻の死の真相を追い求める姿、言動の一つ一つがかっこいい。余談だが、このドラマを見て以来CMや他の作品で彼が明るい役を演じているのを見ると違和感を感じるようになった。
作中では度々タバコを吸うシーンがある。その時のタバコの吸い方がなかなかイカしていて、最初に述べた通りの吸い方をするのである。ほどなくしてタバコを吸うようになった私は今に至るまで大概この吸い方で通している。

誰か気づいてくれないものだろうか。身近でタバコを吸う人はMOZUを見ていないし、MOZUを見ている人はタバコを吸わない。遺憾でならない。あーあ、モノマネだって出来るのに。なんだったら細かすぎて伝わらないモノマネ選手権にだって出るのに。みんな観ようよ。DVD貸すから。そんなことを考えながらタバコを吸っていたら、職場の方にこう言われた。
「シャボン玉吸ってるみたいで可愛いね」
ハードボイルドへの道は遠い。いっそメルヘンである。