サボテン男とイネ女

久々にブログでも書こうかと思ったが、日常あったことで書くようなことはみんな大分日が経ってしまったので私の浅はかな恋愛持論でも語ろうかと思う。
ちなみに、サボテン男とイネ女と銘打ってはいるが実際の所まるっきり男女逆転しても言えることである。

 

こんな経験はないだろうか。付き合う前は相手の方からアプローチをかけられ、そんな態度に自分も惚れて付き合いだした恋人。しかしこちらが愛情を注げば注ぐほどダメ人間化し、百年の恋も醒めてしまっていざ別れようとすると追いすがり、甘い言葉や痛いところを巧みに突いてきた結果再燃するが、しばらくするとまた同じことを繰り返してしまう……。

その恋人、サボテン系である。

サボテンは乾燥地帯に育つ植物である。少量の水で生きていける反面、水をやり過ぎると根腐れする欠点を持つ。サボテン系がダメ人間化する原因は、まさしく根腐れである。サボテン系は愛情を注がれれば注がれるほどそれに甘んじて、その関係に対してやる気をなくしていく。「なんでもこの人がしてくれるからいいや」という具合である。やる気をなくすだけならいいが、「何をしても離れないだろう」という慢心からだんだんと横柄になっていくパターンもある。恋人は愛されたいが為、棘に指を刺されながらもっと愛情を注ぎ、やがて疲れてしまって別れを考えるようになる。こうなるとサボテン系は逆に勢いを取り戻し、時に花を咲かし、また固い棘でこちらの痛いところを突き、巧みに愛情を取り戻す。が、結局は一度腐った根。しばらくしたらまた元の根腐れ状態に逆戻りである。追いかけられるより追いかける方が燃えるタイプとも言える。

サボテン系との付き合い方は大別して以下に分かれる。
まず、根腐れした恋人の仕打ちにひたすら耐える付き合い方。一種の共依存関係だ。これは簡単だが、全く生産性がない。「どうしても好きだから別れられない……」という場合に陥りがち。破滅に向かう可能性は極めて高い。
次に、近づいては離れを繰り返しながら相手が変わる方向を目指す付き合い方。これが一番建設的かもしれない。しかし、精神力にせよ体力にせよかなり消耗するので、どこかで崩壊する危険性をはらんでいる。
最期に、もうこれを機に駆け引きを楽しんじゃう付き合い方。根腐れしない程度にうまくコントロールして、惚れた腫れたの微妙なカーチェイスを繰り広げる。楽しい内はいいが、いずれ飽きるなり疲れるなりしそうだ。これが出来る人ならすっぱり切るくらい造作ないだろうけれど。

つまり何が言いたいかというと、「本気でサボテン系と付き合うと相当キツいから自分をきちんと保ちつつ、どこかでしっかり見切りをつける覚悟がないと危ないよ」、というのがサボテン系と付き合う上での総括だ。

 

さて、一方でサボテン系男女に対局を成すのが、イネ系男女である。
イネは潤沢な水を湛えた田んぼで育つ。彼らは愛情を注げば注ぐほどよく育つのだ。彼ら彼女らは仕事でも私生活でも恋人がいない時期よりも飛躍的なパフォーマンスを見せ、恋人たるあなたもまた稲作のサイクルごとに大きな恵みを授かり、穏やかな日々を過ごせるだろう。おめでとう!
……と、これだけ聞けばどう考えてもサボテン系と同じ土俵に立たせるのも申し訳ないくらいなのだが、イネ系にも当然欠点がある。それは、一度あげた水位を下げられない点だ。イネ系の人は総じてまじめでデリケートな傾向が強い。そのため些細なことで不安になったり、悪くすると依存状態で常に愛情を感じた状態でいないといられなくなってしまう。一度不安になったイネ系は歯止めを失い、従前以上の愛情を求めてしまう。まさに田植えを終えた田んぼのごとき泥沼である。

この潤沢な愛情を受けて伸びる反面その愛情を無尽蔵に求めてしまう、というイネ系の特徴は自己肯定感の不足・欠如に拠るものだと思われる。平たく言えば自分に自信がないタイプの人が多いと言える。そのため、自己肯定感の象徴とも言える愛情を際限なく求めてしまう傾向にある。

イネ系と長く円満な恋人関係・夫婦関係を築くには、多大な愛情を注ぐと言うよりも、この自己肯定感を高めてやる必要がある。そうでないと、サボテン系とは違った形で共依存に陥ってしまうからだ。
ただ甘やかし、耽溺して溺愛するのはさほど難しくはないが、他人の自己肯定感を向上させるのはただ単純に愛情を注げばいいという訳にはいかない。相手の中に自己肯定感を高める装置を作ってやらなければならないからだ。逆にこれがうまくいけば、末永く良好な関係を築けるのではないかと思う。

 

いかがだったろうか。心当たりのある方も少なからずいるのでは。
今回の記事でサボテン系、イネ系について詳しく解説したが、これにより読者諸兄に「世の中いろんな人がいるねー。怖いねー」くらいの感想を与えられたら幸いである。
最後にこれはあくまで私情緒一個人の見解であることをお断わりしておく。